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9.24.

小説を書いていて最近よく思うのですが、人というのは、何か言葉をかけるだけで解決するほど完成された生き物ではないというのがよく分かります。
言葉だけが欲しいのなら、何かの宗教書や哲学書、そういった類の妖しげな本を読めばいいだけの話です。
体験や経験、現実や結果、そういったものにこだわらない限り――つまり、執着や欲望といったものがない限りは、「生きている」とは言えないのだと思います。
無価値や虚無を根底にして、執着も何もなしに、宗教者のように言の葉だけで生きていくというような人は、もう人間ですらないのかもしれません。
そういった要素がときに大切になるというのはよく分かります。
何事も禁欲というのは大切ですからね。
しかし、完全にそっちに流れてしまってもいけない。
無価値は不幸の数を0にしますが、その分幸福の数も0です。
何も問題のない、まったいらな世界。
常に勝ち続ける場所に立っていて、執着と欲望に埋まった世界を見下し続けた人――宗教者としての生きざまですね。
そういう人には、やはり小説は書けない。
言葉だけの抽象表現ばかりに特化されていて、どうやっても具体的な人の経験や体験を描写する能力には欠けてしまっているからですね。
言葉ですべてが解決すると思っている人には、具体的な事象はまったく見えません。
はたまた即物的になりすぎた人も、心や抽象的なものが見えなくなっていく。
体験によって現実を見ること、言葉によって幻想を見ること、言葉に恵まれない人、体験に恵まれない人、やはりここでも肝心なのは中庸ということになります。

ささいな経験と執着と、ささいな言葉と心とで生きていけるというのが、人間にとっては一番幸福な姿なのかもしれません。

8.18.

夏も翳りを見せ、いよいよ秋の匂いが漂ってくる時期に差し当たり、こうして文章を綴るに到ります。
大分長い間ご無沙汰しています。
時間が経つのはとても早い。春かと思えばすぐに夏になって、それもまたすぐに終わり、やがて晩夏へと流れゆく。
日本というのは節操がないですね。
その節操のなさが、日本の美点なのでしょうか?
良く言えば「感受性が豊か」、悪く言えば「何かを継続的に維持する能力に欠けていること」の裏返し。
モノは言いようですね。

季節だけならまだしも、俺の周囲の人間関係も、そうして川のせせらぎのように、柔らかく、静かに流れてゆく。
その静けさが本当に名状しがたくて、まるで着物を織り込むような、しんとした静けさなんです。
今まで色んな人間に出会い、そしてやはり、色んな人間が離れていきました。
勿論離れられれば寂しいし、悲しい。俺だって人間です、当然の感覚だと思います。
でも、それと同時に俺にとってそれは、温かい思い出でもあります。
誰かが言っていました。
「私が死んでも、私はあなたの心の中にいる」、と。
極端かもしれませんが、まったくその通りだと思います。
「私がいない間でも、私はあなたの心の中にいる」と言い換えればいい。
出会ってきた人々もまた、俺の心の中にすべてインプットされているのです。
時々記憶の渦を手に取ってみて、思い出します。
こういう人がいたな、とか、ああいう人がいたな、とか。

こうして思い出に浸ることは、今の多くの日本人にはとても必要なことだと思います。
これだけ皆が個性を根差してそれぞれ孤独になっていき、「価値観が違うから、生理的に受け付けないから、あなたとはうまくやっていけない、さようなら」と言って仲違いしてしまう展開が当たり前になっていくこの世の中で、彼等に残されているものとは、一体なんなのでしょう?
他者を鋭く否定してしまう人間が多くなっていく中で、結果はいつも、孤独に我や個性を貫く自分しかそこにいないというのなら、やはり、思い出というのはいつだって糧になるのではないでしょうか。

一人で完全に生きていけるという人は、それでいいかもしれない。
でも、そんな人間はなかなかいないものなのです。そもそもそんな生き方はつまらないものでもあります。
だからといって、完全に他人に同化して他人任せに生きている人もつまらない。

それを言う俺もまた、自律と他律の間で揺らされ続ける浮舟のようなものです。
そんな生き方を、俺は愛しています。
ささいながら一緒にいてくれる人に、そして自分に、愛と敬意を込めて。

これから少しずつ更新していきたいと思います。
プロフィール

Author:YoMA=OWaRi

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